幼馴染のち恋模様
今日は霜月駅前開発プロジェクトの大きな要となる、駅横の空きテナントの視察の日だ。
ここに誰でも使えるオープンスペースを作る予定で、カフェも併設する。駅直結にして雨でも快適に過ごせるような造りを目指している。
「先日はありがとうございました。本日もよろしくお願いいたします」
キラキラの眩い笑顔で挨拶してくる梗介。
「こちらこそ、よろしくお願いいたします・・・」
この前の真緒との飲み会で好きだと再確認してしまってから今日まで3週間弱あったが、悶々として過ごしていた。指輪の件も気になって昨夜もなかなか寝付けなかった。
(あれ?指輪・・・してない?)
梗介の左手薬指に何も飾られていないことに気がつく。真意を確認したいものの仕事があるため一旦切り替える。
建物内に入っていき、設計図を広げながら各所を確認していく。役所の方と一緒に専門的な知識を交えながら話す梗介の横顔にじーっと見惚れていると不意に梗介がこちらを振り向きハッとして視線を逸らす。
「柚月さん。少しいいですか?」
「はい!」
動揺して思い切り返事をしてしまった。梗介がクスクス笑いながら近づいてくる。
見てたのバレたかな・・・?
「長年この街に住んでいる方から見て、この街にはどんな人が多いと感じますか?」
「どんな人・・・ですか?」
梗介からの唐突な質問に頭の中に?がたくさん浮かぶ。
「えぇ。ご年配の方が多いのは見ていてなんとなく分かるのですが、他にもご意見あればお願いします」
「そうですね・・・あ、専門学校が近いので学生は意外と多いです。ただ、学生が集まったり、勉強をするような場所がないのが残念です。あとは、小さな子連れのご家庭も多いですね。この地区は子育て支援にも力を入れているので子連れの方にも使いやすい施設があるといいと思います」
「なるほど・・・とても参考になります。思ったより若い世代も多いんですね・・・昔とは変わってきてるな」
確かに梗介がこの地を発ってから8年もの月日が流れた。たった8年、されど8年。変わるものもあれば変わらないものもある・・・。
「今回のテーマにぴったりだ。年配の方の過ごしやすさは残しつつ、若い世代も利便性高く過ごせる場所を考えましょう」
梗介のやる気に溢れる瞳を見て、この真っ直ぐな瞳は変わらないなと胸がキュッとなった。
今日の視察を終え、帰ろうと皆さんに挨拶をする。
「お疲れ様でした。お先に失礼いたします」
一礼してその場を後にしようとすると梗介の声が飛んでくる。
「待って!この前の取材の件で話したいことがあるので少しお時間いただけませんか?」
迷ったが、指輪の件がどうしても気になっていたのでいい機会だと頷く。
「分かりました。外で待ってますね」
「ありがとう」
嬉しそうに頬を緩める梗介に勢いよく背を向け外に出る。