幼馴染のち恋模様

なんであんな顔するの!!
高鳴る心臓を必死に押さえつけ深呼吸する。自分の笑顔の破壊力分かっててやってんのか?

「はぁ、心臓に悪い・・・」

今日は直帰の予定だったので、部長に視察を終えたことをメールで報告しておくことにした。
スマホをいじっていると手元に影が落ちる。

「お待たせ」

スマホから顔を上げると梗介が思ったよりも近くにいて、危うくスマホを落としそうになる。

「びっくりした・・・近いです、離れてください」
「もう仕事は終わったんだから他人行儀なのやめろよ」
「この前の取材の件なら仕事です」
「・・・・やらかしたな。とりあえず場所変えよう。腹減った、何食べたい?」
「合わせますよ」
「じゃああそこ行こう、高校の時よく行ってた定食屋・・・まだあるよな?」

途端に不安そうな顔になり問いかける梗介に思わず笑みが溢れる。

「唐揚げ定食がおすすめです」
「よかった〜潰れてたら相当ショックだったわ」

そんな話をしながら歩き出す。この街を二人で並んで歩くのは何年ぶりだろうか・・・。

「二人でこの辺歩くの久しぶりだな」

梗介も同じことを思っていたのかと嬉しくなる。

「葵はずっとここに住んでんだろ?」
「さっきも思いましたけどなんで知ってるんですか?」
「母さんに聞いた」

家族ぐるみだということをどうして忘れていたのだろうか。

「一度も出ようと思ったことはないのか?」
「ないわけでもないですけど・・・今の仕事に就いてからさらにこの街が好きになってしまって、出るに出られなくなってしまいました」

タウン誌は読む人が限られているし、他の雑誌に比べて需要は低いかもしれない。それでも、この街を深掘って行くうちに様々な歴史や人の思いに触れてどんどんこの街の魅力にハマっていった。

「葵の記事読んだよ。この街への尊敬と愛情が溢れるいい記事だった」

読んだの!?
恥ずかしいやら嬉しいやら、気持ちが高速で駆け巡る。

「あ、ありがとうございます・・・」
「今度案内してよ。俺の知らないこといっぱいあるんだなって勉強になる。お、着いたな」

定食屋さんの前につき会話が途切れる。
中へ入るといつものおばさんが出迎えてくれた。

「いらっしゃ〜い!あらっ葵ちゃん来てくれたの。お隣の方は彼氏?随分ハンサムじゃな〜い」

おばさん変なこと言わないで・・・。

「彼氏じゃなくて、東雲さん家の息子さんだよ」
「えっ梗介くん!?こっちに帰ってきたの?立派になったわね〜!小さい時から整ってたけど大人の色気が加わっていい男じゃな〜い!葵ちゃんやるわねぇ」

マシンガンのように話し出すおばさんに若干引きながら再度訂正する。

「だから、違「あばさん久しぶり。こっちで建築事務所を立ち上げたから、これからまたちょくちょく食べにくると思う」

梗介に遮られ最後まで言えなかった。ちゃっかり名刺まで渡している梗介をジトっと睨む。

「社長さんなの!?やだ〜どうしましょっあんた大変よ!東雲さんとこの梗介くんが社長さんだって!」

おばさんは厨房にいる旦那さんに大きな声で伝える。食べにきていた常連のお客さんたちにも当然聞こえているので、いつの間にか梗介は人垣の中だ。
ため息をついて端の席に腰掛ける。これは長くなりそうだ・・・。


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