幼馴染のち恋模様
風呂から上がり深呼吸してからリビングの扉を開ける。
ソファーに座る葵がこちらに振り返り笑顔を向ける。
「梗介!この紅茶すごく美味しいね!私紅茶にハマってるんだけど、これは今まで飲んだ中で一番美味しい!」
無邪気に紅茶の美味しさを語る葵が可愛くて自然と頭を撫でていた。
「へっ?」
「あ、悪い・・・つい・・・」
「ううん・・・嬉しいよ?」
葵は照れたようにはにかむ。
なんだこの尊い生き物は・・・?
キッチンに方向転換して水を喉に流し込む。もう一度深呼吸。
ソファーに戻り葵の隣に腰掛ける。不意に手が出ないよう拳は固く握りしめたまま。
「葵はさ・・・俺に触れられるの、嫌じゃない?」
「どうして?嫌じゃないよ?」
迷いなく返ってきた言葉に安堵する。
「幼馴染でも?」
「?・・・どう言う意味?」
「幼馴染だったカップルって、その・・・家族的な時間が長い分、触れられるのに違和感を覚える人もいるらしくて・・・」
ある雑誌の記事を目にしてから不安に思っていたことを打ち明ける。
「そうなの?私は全然ないよ?さっき頭撫でてくれたのも、手を繋いでくれるのも、その、キ、キス・・・も・・・。梗介だもん・・・梗介がしてくれることはなんだって嬉しいよ?」
顔を真っ赤に染めながらも一生懸命に伝えてくれる葵に愛しさが込み上げる。それならば、とそっと葵を抱きしめた。
「葵・・・好きだよ」
これからは、誤魔化さずにいくらでも伝えられる・・・。
「ふふっ、うん。私も好き」
葵の手も背中に回り、なんとも言えない幸福感に包まれる。
体を離すと葵の頬や額、鼻の先に口付ける。
「ふっ、くすぐったい」
最後に唇にも・・・。
「梗介ってキス魔だよね?」
「え?」
「今日だけで何回されたか分かんない」
クスクス笑いながら衝撃的なことを告げられる。
え?俺キス魔なの?知らなかった・・・。
葵と再会してから知らなかった自分がたくさん出てくる。
「じゃあ覚悟した方がいいな。容赦しないから」
「えっ!お、お手柔らかに・・・」
「ふっ、善処しよう」
今は、葵と思いが通じ合えたことだけで心が満たされる。
「明日も仕事だし、もう寝よう」
「私ソファーでいいよ」
「なんでそうなる」
「だって、今まで一人で寝てたのに私がいたら梗介休まらないでしょ?」
葵なりの気遣いなのだと理解はする。が、納得はしない。
「だからこそだろ。俺はもう一ミリも離れていたくないんだ」
そう言って葵を抱き上げた。所謂お姫様抱っこで。
「ううぇあっ!ちょっと!降ろしてっ」
寝室まで運んでベッドの上にそっと降ろす。布団をかけて自分も反対側に入り込む。
「眠れなくて明日の朝文句言っても聞かないからね」
ムスッと唇を尖らせている葵にキスをして抱きしめる。
「よく眠れそうだ」
「もうっ」
抱きしめたまま葵の丸みを帯びたおでこに口付ける。
「おやすみ、葵」
「うん、おやすみなさい」