幼馴染のち恋模様【完】
「うんうん、驚くのもわかるよ〜かっこいいよね〜。僕も若い頃は・・・」
部長が何か言っているがどんどん声が遠くなり、焦りと戸惑いで心臓が脈打つ。
何が起きているのだろうか・・・。見覚えのある、さらりとした黒髪に通った鼻筋、シャープな輪郭ながら全体的に優しい空気を纏う美形。しかしだいぶ大人びたその顔に今朝の夢が思い出される。
慌てて首を横にブンブン振り頭の中から追い出した。
「柚月さん?大丈夫?」
突然奇行に走る葵に部長が心配そうな表情を向けている。
「すみません、大丈夫です・・・。ちなみに、その仕事は私以外に任せる方はいないのでしょうか?」
「いるにはいるけど、先方が柚月さんをご指名なんだよね」
ご指名!?私がここで働いていることを知ってるの・・・?どうして?
頭の中で幼馴染である彼に疑念を抱く。
部長に目を向けると捨てられた子犬のような目で葵を見つめ「柚月さんにしかできないんだ・・・」とトドメの一撃を喰らわせてきた。私はその言葉に弱い上に、この霜月開発プロジェクトにはとても興味があった。
「「・・・・・・・」」
「・・・・分かりました」
長い沈黙を経て諦めたように返事をする。
部長はずるい。私が断れないと見越して話しているに違いない。悔しい気持ちにクッと奥歯を噛み締める。
「ありがとう!柚月さんなら素敵な記事を書いてくれると信じているよ」
信頼と期待のこもった温かい部長の微笑みに降参だ。覚悟を決めるしかない。
部長に仕事の詳細を聞き早速取り掛かる。