幼馴染のち恋模様
いつもの余裕綽々とした瑠奈からは考えられないほどの豹変ぶりに、息を呑む。
だが、引くわけにはいかない。グッと拳に力を入れた。
「法的に十分証拠となる物ですよ。それからこちらも・・・」
蓮はスマホを出し音声を流す。
「こちらは瑠奈さんのお母様から婚約の情報提供があったという出版社の方の証言です」
瑠奈と母親は顔面蒼白で、唇を噛み締めたまま固まっている。
「お前たち、どういうことだ!母さんまで手を貸したのか!?」
二人は震えながら弁解する。
「嘘じゃない!梗介と婚約したもの!」
「そうです!こんなものはいくらでも捏造できますわ!あなた、可愛い娘の言うことが信じられないの!?」
そう。問題があったのは父親ではなく母親の方だった。
キーキーと文句を言っている横で、社長が片手で顔を覆い深く息を吐いている。
「二人とも落ち着きなさい」
大きな声を出したわけでもないのに響く、深くて重い声。大企業の社長然りとした姿に空気がピリつく。
「話を続けてくれ」
社長は前屈みに項垂れ、話の続きを促す。
「承知いたしました。これを踏まえた上で、こちらの音声をお聞きください」
蓮はスマホを操作して先程のものとは違う音声を流す。
『私と婚約すれば、父が梗介の事務所をもっと大きくしてくれるわ。父の会社としてもあなたの事務所の力は大きいと思うの。Win-Winでしょ?』
『たしかにそうかもしれない』
『ならっ』
『でも、君と婚約はしない。俺が想いを向けるのは葵だけだ』
『断るの?婚約を断ればこの事務所もどうなるか分からないわよ?』
『好きにすればいい。俺の答えは変わらない』
そこまで流すと再生を止める。
社長は頭を抱え、瑠奈と母親は、ヒステリックに叫びSPに止められている。
「瑠奈と妻を部屋に連れて行きなさい。出られないように見張りも頼む」
「承知しました」
「瑠奈ちゃんに何するの!」
SPが敬礼して暴れる二人を連れて行く。
リビングには梗介と蓮と社長の三人になった。