幼馴染のち恋模様【完】
梗介の腕の力が緩まり、少し隙間が開く。
それが何だか寂しくて縋り付くように擦り寄った。
「もっとぎゅってして・・・」
強請るような言い方になってしまいハッと我にかえるが、梗介は言われた通り力強く抱きしめてくれた。
「可愛い・・・」
居た堪れなくなり、梗介の胸に顔を埋める。
「葵、顔見せて」
おずおずと顔を上げ、梗介の綺麗な顔が目の前に現れる。
直視できなくて、真っ赤になりながら目線は梗介の首元・・・。
微かに動く喉仏がセクシー・・・こらっ!なんて事考えてるの葵!
頭の中がとても騒がしい葵を他所に、梗介は愛でるように葵の髪を撫で、頬に触れる。そのまま顔を近づけ唇が、重なる・・・。
突然の出来事に葵は目を開いたまま固まる。
「ごめん。葵が可愛くて我慢できなかった」
キス魔再来・・・。
梗介の顔を恨めしげに見て気がつく、頬にある涙の跡・・・。
出会って20年弱、梗介が涙を流すところなんて見たことが無かった。そんな彼が涙を流すくらい追い詰められていたのかと気付かされ、胸が苦しくなった。
それでも諦めずに私のところへ走ってきてくれた事が嬉しくて、愛しくて・・・気付けば自分から梗介にキスをしていた。
今度は梗介が驚いて固まる。
葵はありがとうの気持ちを込めて微笑む。
それを見て梗介に火がつき、葵を膝の上に跨がらせて座らせる。向き合って抱っこの状態だ。
「こ、この格好は恥ずかしいよ・・・」
羞恥が舞い戻り、降りようと身を捩るが、梗介に腰を掴まれグッと引き寄せられる。
「今は一ミリも離れたくない」
そう言ってまた唇が奪われた。
先ほどのチュッと触れ合うだけの可愛らしいキスとは違い、深く絡めとるような濃厚なキスに眩暈がする。
車内に二人の荒々しい吐息と、絡み合う水音が響く。恥ずかしさはどこへやら・・・梗介に求められていることが嬉しくて、自分からも舌を絡ませた。
どのくらいの時間そうしていたのか、葵は酸欠で頭がぼーっとしている。
トロンっとしている葵を見つめ梗介は妖艶な笑みを浮かべる。
「その顔、唆るな」
葵を引き寄せ耳元で囁く。
「葵・・・部屋行っていい?」
言われたことの意味を理解するのに時間はかからなかった。
小さく頷いた葵にもう一度キスをすると、膝から降ろしてシートに座らせた。
「宿にもう一人泊まっていいか聞いてみる」と言って電話をかける。片手はスマホ、もう片方の手は私の手と絡まっている。
『今は一ミリも離れたくない』
梗介の言葉が思い出されて心臓が跳ねる。指先から伝わってしまうんじゃないかと言うほどドクドクと音を立てていて、自分の体が心配になる程だ。
「大丈夫だって。行こう」
電話を終えた梗介は、そのまま葵の手を引いて宿の中へ入っていく。