幼馴染のち恋模様

あれから、宿をチェックアウトして駅前を少し食べ歩きして空港に向かった。
空港に向かう車内で、梗介に朝、何故部屋にいなかったのかを聞かれた。

嫌な気持ちにさせるかもしれない・・・。でも、今朝、何でも話してと言われたばかりだ。言わない選択肢はない。

「あのね・・・昨日、宿の前にいた・・・大学の時の先輩と電話をしてたの。心配してくれてたみたいだったから解決したこと伝えて、それで・・・こく、はくされて・・・でも!断りました!想っている人がいるからって、ごめんなさいって。そしたらすごく梗介に会いたくなって、早歩きで部屋まで戻ったら梗介が出てきました。以上です」

最後は仕事の時のような締め方になってしまったが、上手く伝えられただろうか・・・?

「そうか・・・」

それだけ言うと口を閉ざす梗介。

「デートしたのは何で?」
「デッ、あれは!折角旅行に来てたし、久しぶりに会ったし、梗介とは、その・・・付き合ってなかった、から・・・」
「俺は別れたつもりないんだけど」
「え!?」

別れてないの!?

「葵のあのメッセージに俺は返事してない。つまり別れてない」

屁理屈では!?

「屁理屈じゃなくて事実だ」

心読まれた!?

「全部顔に出てるぞ」
「うぅ〜・・・えっ、じゃあ・・・私、う、浮気・・・!?」
「そう言うことになるな」

血の気が引いていき、顔が青ざめていく。

「待って待って!違うのっ、えっと・・・あの時は、本当に別れてたと思ってたし、でも別にひろくんに気持ちがあったわけでもなくてっ」
「ひろくん・・・?」
「!じゃなくて、えと・・・先輩、に!気持ちがあったとかではなく!私が好きなのはずっと梗介だけだし、ひっ、じゃなくて、先輩といても梗介のことばっかり考えてたんだよ!」
「ふはっ」

隣から吹き出す声が聞こえて目線を動かす。

「ふっ、ははっ!悪いっ・・・焦って一生懸命喋る葵が可愛くて意地悪した」

こ、こいつ〜!

「梗介ひどい!」
「ごめんって・・・ちゃんと教えてくれてありがとう」
「当たり前だよ・・・浮気じゃないからね。絶対そんなことしない」
「分かってるよ」

梗介は片手でハンドルを握りながら、もう片方の手で葵の頭を撫でた。

「梗介だけが、好き」

赤信号で車が止まる。

「葵」

名前を呼ばれ、恥ずかしさで俯いていた顔を上げる。

「んっ」

唇に少し濡れた柔らかい感覚。食むように重ねられ、チュッと音を立てて離れていった。

「!?」
「運転に支障をきたすので可愛さを控えてください」

悪戯に笑い、ぺろっと唇を舐める色っぽい仕草に心臓が飛び出そうなくらい鼓動する。

「し、心臓に支障をきたすので、色気を出すのは控えてください!」
「色気か・・・なるほど。葵はそういうのが好きなんだな」

何をふむふむと頷いているのだこの男はっ!

「そんなこと言ってないでしょ!」
「じゃあ、嫌い?」

その言葉を私が嘘でも言えないことを分かってて聞いているのだろうか?

「外ではダメ・・・」
「何で?」
「梗介のそういうのは、私だけが知っていたいの・・・」

他の人が見たら絶対梗介の虜になってしまう。ただでさえ顔が良いのだから気をつけていただかないと!

「はぁ・・・本当に連れて行きたい。これから別のとこに帰るなんて信じたくない」

葵は、気が付かぬ間に梗介の心を打ち抜いていた。

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