幼馴染のち恋模様【完】
驚いて固まっていると、そこに立っていたのは待ち焦がれた愛しい人の姿。
「ただいま、葵」
「梗介っ・・・」
会えた喜びで自然と頬が緩み、満面の笑みで駆け寄る葵。梗介は両手を広げ飛び込んでくる葵をぎゅっと抱き止めた。
これでもかというほど抱きしめ、存在を確かめる。
「会いたかった・・・」
「私も、すごく会いたかったっ」
大好きな梗介の香りを肺いっぱいに吸い込む。
「嗅ぐな。風呂入ってないんだから」
「いいの。梗介の匂い安心する・・・」
「じゃあ、俺も」
そう言って同じようにすごい吸引力でうなじの辺りを嗅がれる。
「あはは!くすぐったい!」
「葵の匂いと揚げ物の匂い」
「はっ!まずい!」
唐揚げの存在をすっかり忘れていた・・・!
梗介を押し除けキッチンに戻る。少し揚げすぎているが、食べられなくはなさそうなので、責任を持って自分で食べることにする。
「うまそっ」
いつの間にか後ろからハグをして一緒に唐揚げを覗き込む梗介。
「油飛ぶから危ないよ」
「葵が突き飛ばすから傷ついた。慰めて」
「うっ・・・」
致し方ない、と心を決め後ろを振り返る。
チュッと触れるだけのキスをして、また唐揚げに向き直った。
恥ずかしさで耳まで赤くなる葵の後ろでは、獲物を見つけたようにニヤッと笑う梗介。
真っ赤な葵の耳にキスをすると、葵の体はビクッと反応する。
「梗介・・・危ないから」
「耳、弱いもんな」
耳元で囁かれ、そのままペロッと舐められる。
「っ、待って!ご飯、食べてほしい・・・」
「食べないわけないだろ。でも、葵が目の前にいるのに触れないなんてこと出来ないんだよ」
垂れた耳と尻尾が見えるのは私だけでしょうか・・・。
どさくさに紛れて色んなところにキスしないでほしい。
「じゃあまず、お風呂に入ってきたら?」
「嫌だ」
「じゃあ、座って待ってて」
「嫌だ」
イヤイヤ期ですか?
梗介は抱きしめたまま離そうとせず、子どものように駄々をこねている。
「ご飯にする?お風呂にする?それとも、き・が・え?」
お決まりのセリフを言えたことに内心満足する葵。
言ってみたかったんだよね。
「言ってみたかったの?可愛い。けど選択肢が一個間違ってる」
言ってみたかったのなんでバレた!?
「間違ってないよ」
「葵がいい」
「葵は選択肢にはありません」
どちらも引かない攻防が続き、先に折れのは梗介だった。
「はぁ・・・分かった、風呂入ってくる。その代わり、食べ終わった後、覚悟しとけよ」
あれ?間違えた?
獲物を狩るオオカミのような鋭い目線を残し去っていく梗介に悪寒が走った。
「とっ取り敢えず、唐揚げを揚げよう!」
考えるのを放棄して唐揚げ作りに専念することにした。