幼馴染のち恋模様
「ってことがあって・・・」
居酒屋で真緒に事の経緯を全て話した。
「あいつ帰ってきてんだ。てか結婚?信じられないんだけど・・・(あんだけしつこく葵の連絡先教えろって言ってきてた奴が?)」
真緒が険しい顔で呟く。
「もう28だもん。あれだけ顔整ってれば結婚してて当然だよね」
モヤモヤする気持ちを押し込め無理やり笑顔を作る。
「断ち切ったんじゃなかったの?」
「そうだよ・・・」
梗介には幼馴染以上の気持ちはないのだとあの時、あの屋上で言われた言葉で確信していた。30歳なんて遠い未来の話をしたのはきっと、私を傷つけないための優しい牽制だったのだろう。だから私のこの気持ちは梗介にとって迷惑にしかならないと、距離を置いた。そばにいたら溢れ出してしまうと思ったから・・・。
その後、海外に留学していった梗介とさらに距離ができ、彼氏もいたりした。だからこの気持ちには終止符が打てていたと思っていたのに・・・。
「会えなかったから気持ちが消えたと思ってたけど、実際会ったら全然消化できてなかったと・・・まだ好きなの?」
「好きじゃない!」
「へぇ〜?」
即答する私に探るような視線を向ける真緒。
ニヤニヤしないで。
「ちょっと高校の時の気持ちを思い出しただけで、好きとは違うもん・・・」
確かに、背後から囲われた時はドキッとしたけどあれは相手が誰でもそうなるし・・・
頭の中でも必死に言い訳を並べる。
「言い訳してる時点で怪しいけど」
「うっ・・・」
鋭い指摘に言葉が詰まる。
「高校の時もそうだけどさ、素直なのがあんたの良いところなのに、あいつのことになると途端に機能しなくなるのなんで?」
「・・・幼馴染だから?」
「関係が壊れるのが怖いってやつ?」
「うん・・・」
梗介とは家族ぐるみの中だ。私の勝手な想いで気まずくなるのは避けたかった。
「好きなら好きでいいじゃん、単純なことだよ。誤魔化す必要はないと思うけど?」
そうなのだろうか?この気持ちは誰にとっても良くないものなんだと思っていたけど・・・。どんなに都合のいい言葉たちで覆っても心に居着くこの気持ちはムクムクと顔を出す。
「本当は?」
真緒の答え合わせのような問いかけに、諦めて答える。
「好き・・・」
「やっと素直になったね。もどかしいったらありゃしないわ」
呆れたように肩をすくめる真緒。
実際言葉にするとブワッと心の中を満たし今まで封じ込めていた分溢れ出す。
「なんで忘れられないんだろう・・・。次会う時どんな顔して会えばいいの〜」
居た堪れなくて両手で顔を覆う。
「いつも通りよ、いつも通り。それにさ、結婚だって本当なの?本人から結婚してるって言われたわけじゃないんでしょ?」
「わざわざ言わないよ、指輪してるのに・・・」
「女避けに結婚指輪はめる人もいるのよ」
「え、そうなの?」
「私の職場の先輩にも結婚する気ないけど女が寄ってくるから指輪はめてるっていう人いるよ?結婚してても指輪外して不倫する人だっているんだから」
「何を信じればいいか分からないね・・・」
世の中の暗い部分を垣間見て震える。
「梗介もそうだとしたら私詰んでるじゃん・・・」
「うだうだ考えてもしょうがない!直接聞きなさいよ」
「急に投げやり・・・面倒くさくなったでしょ?」
「えぇ、とても。あ!ダーリンからお迎えの連絡♡」
「おのれ、裏切り者〜」
「とにかく事実確認!分かった?」
そう釘を刺されお開きとなった。