idol
「あのー、すみません!芸能界に興味ありませんか?」



はぁ〜。またか。いつも街を歩けば声をかけられる。



「あー、今はそういうの大丈夫です」



ニコっと笑って答える。



「そう言わず、お話だけでも…!」



スカウトマンの人が慌てて名刺を差し出してくる。



しょうがない。一応もらっとくか。



「ありがとうございます。ちょっと考えますね」



毎回こうやって断り続けるのは疲れるんだよなぁ。



私はかわいい。自分でもそう思ってる。



小顔で、サラサラの髪の毛に、色白の長く細い手足。毛穴一つ見当たらないきれいな肌に、形のいい鼻と唇。二重のきれいな瞳。



こんなに美人に産んでくれたんだから感謝しないとね。



今どこにいるか知らないけど。



ーーーーーーーーーー



あれ。なんかめっちゃ人が集まってる。なんだろう。



自然と足が人混みの方に向かっていた。



音楽…?たくさんの人がスマホで誰かを撮影している。



有名人かな?



不思議思って人混みの中を覗いてみると、、



ちがう…。有名人じゃない。

一般人の女の子じゃん。



誰だろうと思って見ていると、



え……!待って…!
めっちゃダンス上手いんだけど!



こんな上手い人みたことない…!



K-POPの音楽に合わせて踊っている。

迫力がある。

かっこいい…!



流れている音楽が終わると歓声と拍手が上がった。



「すごい!」

「かっこいい!」

「ダンサーですか!?」



「私は、韓国でアイドルになってみせます!」

女の子は笑顔でそう言った。



「頑張ってね!応援してるよ!」



見ていた人たちはそう応援の言葉を口にしながら去っていく。



鳥肌がたった。こんなにすごいものを見て。



だから、私は声をかけずにはいられなかった。



「あの、!今のダンスめっちゃすごかったです!!」



その女の子は振り返る。



「わぁ、ありがとう!アイドルになれるように頑張るね!」



そう笑顔で女の子は言った。

自分の夢をこうやって素直に胸を張って言える彼女が羨ましかった。



「なんでアイドルになりたいの?」

そう聞いてみた。



「、え?私はね、昔、病気だったの。ずっとアイドルになることが夢だった。でも、たくさん反対されたんだけど諦めなかった。そして、病気は治って、決めたの。アイドルになるって。『誰でも諦めなかったら夢は叶う』っていうことを私は世界に証明したい」



真剣な顔をしてそう言った。



ドクンっ。私の心臓が脈打った。

すごい。単純にそう思った。

彼女は踊っているとき、輝いていた。

何かになろうとすればこんなに輝けるんだ。

そう思った。



私は小さい頃、歌手になりたかった。

たくさんの人が、私の歌は感動する、世界を変えられる歌声を持ってる。



ーーーそう言ってくれた。



でもどこかで諦めていた。




























































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