【SS集】クリスマスに甘い恋を。
「あれ、おねーちゃん? いたんだ」
「あぁ、紗良、今追い出すから。帰りにケーキを買ってきたんだ、あとで食べよう」
「わーい、やった~! 早くケーキ食べたいなぁ」
紗良に語りかけるときのやさしい声が、別人みたいだといつも思う。
グイッと、また強い力で引っぱられて、私は転びそうな いきおいで家の外に出た。
「っ…」
「二度と帰ってくるな。今度家で顔を見たら…」
タイツごしに、地面の冷たさを感じる。
はぁ、と吐いた息が白くなって私の視界をおおったとき、父もまた私に顔を寄せて、言った。
「殺すぞ」
耳に侵入した憎悪が、ゾクリと私の体をふるわせる。
父の手が離れ、ガチャッと玄関の扉が閉められると、ナイフのような冷気が急速に私の体温をうばっていった。