【SS集】クリスマスに甘い恋を。
 でも…!




「あんた」




 私はツカツカと“彼氏”だった男に近づいて、もこもこのジャンパーにおおわれた肩をつかんだ。

 のんきに振り向いたクズは、私を見るなり顔をこわばらせる。




「告白OKしてあげたのはナシね。今後私の視界に入ったらそのアホ(づら)ひっぱたくから」


「え…?」


「ま、待ってくれ、汐音(しおね)!」




 言いたいことを言って背を向けると、クズは私を呼び止めてきた。

 恋人だからと、渋々許してあげた名前呼び。

 今は吐き気すら覚えて、眉根を寄せながら振り向く。




「名前で呼ばないで、キモいから」




 今さらあせった顔をしているクズと、困惑(こんわく)顔の女子を視界から外して、私はケーキ屋がある商店街のほうへ歩いていった。

 コツコツと、ブーツの底がアスファルトをたたく。
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