【中編】激甘すぎる婚前同居。 〜訳アリ令嬢は染織家の盲愛に気づかない〜
「旦那様。何か、用でしょうか?」
「用がなくては来ない。お前に縁談が来ているんだ」
「縁談……」
「あぁ。やっと、お前が役に立てる日が来たんだ」
旦那様の声が明るく弾んでいるのを見て、ようやく理解した。とても機嫌がいいのは、これが理由だったのだ。心の中で、複雑な感情が渦巻く。
この家に引き取られてから、何度も思い返してきた日々が、鮮やかに蘇る。私、如月美宙は如月家の娘となっているが、養女だ。
血のつながりはなく、ただの「役割」を果たすための存在。引き取られたあの日、冷たい視線と淡々とした言葉で説明された自分の立場を、忘れられない。
なぜ私がここにいるのか……それは、如月家が私を駒として使っているからだ。
わかっていたことだ。だけど、胸の奥が少し痛む。
でも、仕方ない。私を引き取って育ててもらった恩があるんだから。