【中編】激甘すぎる婚前同居。 〜訳アリ令嬢は染織家の盲愛に気づかない〜
第1話【役割】
ことの始まりは、ここにいるのは珍しい私付きの使用人の言葉だった。
「美宙さん、旦那様がいらっしゃいました」
「……え?」
使用人にどうしてか聞く前に、部屋のドアがゆっくりと開いた。
それと同時に中年の男性が入ってくる。その姿を見た瞬間、私の胸に小さなざわめきが広がった。
この人はこの家の主人で旦那様であり私の養父でもある如月寛治さんだ。普段は別邸にいる私のもとに、滅多に顔を見せない人。
何か特別なことが起こる予感がして、心臓が少し速く鳴り始める。
もしかして、何か悪い知らせ? それとも、私の存在がようやく邪魔になったのか……そんな不安が頭をよぎる。