ゲーム友達【番外編】
『久々すぎない?』
ヘッドホンから聞こえる心地いい声。
久しぶりに聞く早坂くんの声は変わらなくて安心した。
「忙しくて全然時間つくれなくて」
高校を卒業する時。
一緒にオンラインゲームをする“ゲーム友達”から、“恋人同士”へと形を変えた私たちは、大学生になった。
早坂くんは東京の大学へ進学し、
私は地元の大学へ電車で1時間ほどかけて通っている。
要するに遠距離恋愛というやつだ。
『その割に毎日ログイン履歴あるけど』
「う…。ログインボーナスのために」
『ハハ。ログインボーナスに負ける俺』
早坂くんの大学は単位に余裕があるらしく、私と違ってゆとりある毎日を送っている様子。
私は、学校にバイトに慌ただしく毎日を過ごしていた。
『全然会ってないよなー』
「うん、会ってないね」
『たまには会いにきてよ、あかり』
早坂くんの言葉に、ヘッドホンの向こう側からヒューと声が聞こえた気がした。
「…誰かいる?」
気のせいかなと思ったけど、やっぱり聞こえる。
何人かの声。
『あーうん、同じゼミの奴ら来てる。ごめん、隣の部屋だから聞こえてないと思った』