由美ちゃんへの手紙
 由美ちゃん あなたとぼくは子供の頃には同じ施設で過ごしていた。
ぼくは17歳でその施設を離れてしまったけれど、あなたはずっと居たんだよね?
 ぼくは視力障碍者、あなたは精神障碍者。
同じ時間を過ごすことは最後まで出来なかった。
唯一、あなたの傍に居られたのは中学3年の時だけだった。 しかも往復のマイクロバスの中だけ。
 あなたは何か有ると意味不明な奇声を上げていたよね。 そのたびに職員には叱られ、先輩男子には叩かれまくっていた。
怖かったよね? 寂しかったよね?
 その時、ぼくはハッとしたんだ。 (こんなことをやってたらダメだ。)って。
それで由美ちゃんの隣に座れた時に思い切って手を握ってみた。 頭を撫でてみた。
そして背中をさすってみた。 驚いた。
奇声を上げていたあなたがおとなしくなってしまったんだ。 (これだ!)って思った。

 マイクロバスに乗らなくなってからもあなたはぼくのことを覚えてくれていた。 嬉しかった。
でもそのままぼくらは離れてしまった。
あなたは福岡に居る。 ぼくは北海道にまで来てしまった。
簡単に会うことは出来なくなってしまったんだ。
 今はどうしてますか? 元気ですか?
もしかしたら死んでしまったかな? そんなことを考えたりもする。
会えるならもう一度会いたい。 二度と離さないために。
 ンマーとかウェンウェンとか誰が聞いても意味がさっぱり分からない奇声ばかり上げていて他の人たちは面倒くさそうに見ていたよね。
でもあなたはぼくに教えてくれた。
精神障碍者でもちゃんと心が通じるんだってことを。
そしてあなたがぼくを好きだったことも。
 由美ちゃん いつかまた会おう。 今度は離れないんだよ。
待ってるからね。
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