これはもはや事故です!
 返事ができない。

 優しくされている自覚はある。
 でも特別だと、うぬぼれていいのか迷う。

『ね、私がさっき聞いたのはね。ちょっと確認したかったんだ』

「……何を?」

『弱ってる美羽が、都合よく扱われていないってこと。良かったね、大事にされてるじゃん』

 胸の奥が、じわっとする。

『本気の人ほど、踏み込むのに慎重になるんだよ。特に、相手が傷ついてるってわかってたら」

「……」

『それに、足が治ったら終わり、って思ってるの、完全に美羽の自己評価低すぎ』

「う……」

 図星すぎて、言葉に詰まる。

『自分の価値を誰かの役に立つかどうかで考えるの、もうやめな?』

 優佳の声は、強くもなく、でも揺るがなかった。

『美羽はさ、今まで誰にもちゃんと甘えられなかっただけ。だから、自分は価値がないと思いこんでいるんだよ。だから、不安なんでしょ』

 美羽は、膝の上で指を握りしめる。

「……うん」

『だったらさ』

 少し明るい声に戻って、優佳が言った。

『今は、彼に思いっきり、甘えさせてもらえばいいじゃん』

 その言葉が、静かに胸に落ちる。

「……優佳」

『なに?』

「ありがとう……」

『はいはい。あとさ、イイ感じになっても、イヤだったら、ちゃんと断るんだよ?』

「だ、だから、そんな感じになってないってば!」

『はいはい。じゃ、“同居人さん”によろしく~』

 ぷつ、と通話が切れた。

 スマホを胸に抱いたまま、美羽は天井を見上げる。

(……足が治ったら終わり、じゃない、かもしれない)

 

< 104 / 132 >

この作品をシェア

pagetop