これはもはや事故です!
 磯崎の不安を吸い取るみたいなその笑い方を見ていると、知らず知らず、呼吸がふわっと軽くなる。
 思わず見惚れてしまう。

「熱いと危ないから、気をつけて。ほら……手、ここ」

 トーストとスープをそっと示す動作までもが優しくて、また心臓が忙しくなる。

「少し冷ます?熱いと危ないし」

「あ……だ、大丈夫です」

 スプーンを渡される手がふと触れ、また胸がドキンと跳ねる。

 会話はぎこちないのに、磯崎の動作はどれも自然で優しくて、余計に落ち着かない。

 食べ終わる頃、磯崎がふいに席を立った。

「ちょっと待ってて」

 そう言って向かったのは、玄関の方へ。
 数十秒後、磯崎が押して戻ってきたのは……。

「……え?」

 小さな車いす。

 コンパクトで、軽量で、クッションがしっかりしたタイプ。
 明らかに急ごしらえじゃない。
 誰かに頼んだんだ。

「これ……どうしたんですか?」

「朝一で、業者に届けてもらったんだ」

 なんでもないように言う。

(……そんな……)

 胸がじわっと熱くなる。

「安心した?」

 そう言って、磯崎は、ふわりと優しく微笑んだ。
その笑顔にドキンと心臓が跳ねる。

「……はい。すごく」

と言ってから気がついた。
寝起きのとき、抱っこじゃなくて、車いすでも良かったんじゃ……?







 
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