これはもはや事故です!

どうしよう……。

「君が傷つけられた代償なんだから」

 その言葉が胸の奥に残響のように響いて、美羽は思わず視線をそらした。

(……だめ。揺らいじゃだめ。真美ちゃんが言ってたじゃん。来る者拒まずで、モテるから気をつけてって……)

 そう思えば思うほど、美羽の胸に磯崎の真剣な瞳がどんどん入り込んでくる。

「……あ、あの……磯崎さん……」

 自分でも驚くぐらいに声が震えている。
磯崎はすぐに反応した。

「痛むのか?」

「え? い、いえ、違います……!そうじゃなくて、ただ……」

 言い淀む美羽を見て、磯崎の眉がふわっと下がった。

「……美羽さん。何か、無理してる?」

(や、やめて……そんな優しい声で聞かれたら……ほんとに誤解しちゃう……!!)

「俺に気を遣わなくていい」

 正面から向けられるまっすぐな眼差し。
 逃げ場がない。

 だけど、その優しさに触れるたび、真美から言われた言葉が美羽の胸に刺さる。

(そう。優しいのは、誰にでも……)

 そう思おうとしても、目の前の磯崎の優しさは、心が籠っているように感じて、誰にでも向ける優しさのような軽いものには思えなかった。
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