これはもはや事故です!
 すると優佳は、ピシャッと言った。

『ねぇ、美羽。その噂、どこから聞いたの?』

「職場の真美ちゃん……」

『ふーん……その子の言っていることが本当なの?その子は誰からその噂を聞いたの?』

「……え?」

『だって、あるでしょ、そういうの。振られた腹いせに本人を悪く言う人』

「…………」

 図星すぎて言葉が出なかった。

 優佳は、柔らかく続ける。

『美羽。噂ってね……言う側の感情が入るの。だから、人の言葉だけで誰かを決めつけたらダメだと思う』

「……うん」

『大事なのは、美羽が実際に見て、感じた磯崎さんでしょ?』

 その一言で、何度も助けてくれた磯崎の姿が胸に浮かんだ。

 冷たい夜風の中で抱き上げてくれた腕。
 ケガをした聞いて本気で焦った目。
 朝ごはんまで用意してくれた優しさ。

(……噂の“女たらし”とは、全然違う)

「優佳……ありがとう……」

『悩んで当たり前だよ。でもね、誰かの悪口より、自分の目で見たものの方がずっと信用できるよ』

 電話越しの優しい声に、胸の強張りがほどけていくのが分かった。

「……明日、ちゃんと磯崎さんと話してみる」

『それがいいよ。磯崎さん、美羽のこと大切にしてくれそうじゃん』

「!? な、なんでそうなるの!」

『ふふ、勘よ。親友の勘!』

 その言い方が悔しいほど当たっていて、美羽は顔が熱くなる。
 通話が切れてからも、熱が引かず、枕に顔を埋めた。

(……寝れない。けど……心はさっきより、ずっと軽い)
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