これはもはや事故です!
(……磯崎さん、ほんとに優しい)

 助けてくれた。
 病院まで連れていってくれた。
 着替えまで買ってきてくれた。
 朝ごはんだって、毎日用意してくれる。

 思い返すほど、胸がふわっとなる。

 だけど……これは、恋とかそういうのじゃない。

 自分の胸のざわめきを、無理やり理性で押さえ込む。

(だって……磯崎さんは、すごい人だもん)

 弁護士で、仕事もできて、落ち着いていて、余裕があって。
 背が高くて、顔もよくて……。
 こんな“ハイクラスの大人の男性”が、自分みたいな地味で高卒のカフェ店員を恋愛対象に見るわけがない。

(これは……責任感、だよね)

 巻き込んでしまったから。
 怪我を負わせてしまったから。
 その責任で、優しくしてくれているだけ。

 そう思った瞬間、胸がきゅっと痛んだ。

(……ちゃんと、線を引かないと)

 優しさに甘えて期待して、あとで傷つくのは自分。
 だから、勘違いしないように距離を取ろう。

 そう決めて、美羽はそっと目を閉じた。
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