これはもはや事故です!
「あ……」

 喉が詰まったように、思うように言葉が出ない。 

 美羽は、期待してしまうことが、怖かった。
 信じてしまうことが。
 そして……また、ひとりになることが。

 でも、ドアの前に立つ磯崎の姿を見ていると、それ以上に、胸の奥がしめつけられる。

(……会いたかった)

 認めたくないのに、辛い時間、何度も思い出していたのは、この人だった。
 美羽は、ヒールの袋を胸に抱いたまま、そっと、前に出た。

 ほんの、半歩。
 それだけで、心臓が壊れそうなほど跳ねる。

 磯崎の目が、わずかに見開かれた。

「……美羽さん」

 名前を呼ばれて、足がすくみそうになる。
 それでも、逃げなかった。

(怖い。でも……このまま閉じこもったら、きっと後悔する)

「……あの……」

 声が震える。

「磯崎さんは……優しいから……責任感が強いから……だから、ここまでしてくれただけですよね……?」

 言葉にしてしまうと、胸の奥がきりきりと痛んだ。

「私……勘違い、したくなくて……」
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