これはもはや事故です!
 目を伏せたまま、美羽は返事を待つ。
 否定される覚悟も、突き放される覚悟も、していた。

 でも、磯崎は、引かなかった。
 
「責任感からじゃない」

 声は低く、迷いがなかった。
 美羽が顔を上げると、その目は、逃げも誤魔化しもないまっすぐな色をしていた。

「誰にでも優しいわけでもない……君だからだ」

 美羽の胸の奥で、何かが音を立てて崩れる。

「心配だった。会いたかったんだ」

 夜の静けさの中で、その言葉だけが、はっきりと響いた。

 細い指先が、かすかに震える。

(……そんなこと、言われたら……)

 怖い。
 でも……。
 それ以上に、胸が熱い。

 逃げたい気持ちと、この人のそばにいたい気持ちが、激しくぶつかり合う。

 そして、美羽は、もう一歩、磯崎に近づいた。

 答えを、求めるように。
 怖さごと、差し出すように。

 その距離は、もう逃げられないほど近かった。
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