夫のいない間に
 まだ、二人が付き合って間もない頃だった。

 奥手だった私の″初めて の相手は、夫の貴士だったし、それまで異性と付き合うのが上手じゃなかった私にとって、当時、貴士は確かに最愛の人だった。

 この【マイライフ】の主人公のように、重い病気で亡くなってしまったら、どうしよう?

 感情移入し、映画館でボロ泣きになった私を見て、貴士は、自身も涙目で、

 「何、泣いてんだよ」

 って笑っていたっけ。

 その時、彼が私と同じように私を失った時の事を思っていてくれたら、嬉しいなって思った。

 ううん。
 きっと、そうだったはずだ。

 あの頃、私達は同じくらいの温度と速度で、愛を育てていたはずなんだ。

 キスをして、肌を重ねて、就寝を共にして、お互いの匂いを満喫して、家庭を夢見て――

 ″この人でなければ ″ 。

 そう思って、結婚を決めた。


 それなのに。
 なんでこうなったのだろう?







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