夫のいない間に
 翌日、私はハローワークに行った。
 現在、休んでいるパートの仕事は退職することに決め、次の仕事を探す為だ。

 痛めてしまった膝は、悪化はしても、もう良くはならないし、元には戻らない。

 なので、足に負担をかけない、出来たら正規雇用の仕事に就きたいと思った。

 「72番でお待ちの方、3番窓口へどうぞ」

 「はい」

  窓口に向かいながら、片隅に以前にはなかったキッズコーナーが設けられているのに気が付いた。

 健次や理名を連れて、就職活動をしていた頃が懐かしい。

 当時は、なぜ、こんな小さい子供を預けてまで働かなきゃいけないのか、と貴士の決めた方針に不満を持ったまま仕事を探していた。

 あの頃は、自分の為ではなく夫の為に仕事をしていたように思う。


 「吉岡梨子さんは、今回、正規雇用、もしくは社会保険付きのフルタイムをお探しなんですね?」


 私は、大きく頷く。

 「履歴を拝見しましたが、ご結婚されてからはずっと短時間のパートタイマーでお仕事されてましたよね? もう、お子さんに手が掛からなくなったので、ということで宜しいですか?」

 担当の男性職員が、PCを入力しながら尋ねる。

 私は、軽く首を横に振った。


 「独りでも生きていけるように、です」


 紹介状を貰ってハローワークを出ると、近くの公園から、またホーホケキョと、うぐいすの鳴き声が聞こえた。売れ残り、伴侶がいなくても、力強く生きているらしい。

 駐車場に戻る足は軽やかで、自然と歩幅を大きくしたけれど、痛みはもう感じなかった。







  ** 終  わ  り**

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