どっちがヒロイン⁈〜ヒロイン力が高いのは不良でした〜(1話だけ大賞応募作品)
どっちがヒロイン⁈
鳳岳園の総長、黒崎涼風は最強だ。
――ただしそれは、九条朔がそばにいる時に限る。
そんな噂が、最近になって校内で囁かれ始めている。
ちっ、馬鹿馬鹿しい。
総長は私だし、守られる理由なんてどこにもない。
鳳岳園は、名前だけは上品だが中身は弱肉強食の学園だ。
派閥、縄張り、序列。
違う派閥の2人がすれ違うだけで空気は凍る
言葉より先に肩がぶつかる
教師はいるが機能していない
入学初日でそれを理解できなかった生徒は、遅かれ
早かれ居場所を失う。
だから私は強くなった。
拳も、覚悟も、総長としての立場も。
屋上に集まる視線を感じながら、腕を組む。
これが“総長の姿”だ。
階段を降りる
――その瞬間だった。
「…っは?」
背中を押した、大きな手の感触がたしかにあった
視界が傾く。
しまった、と思った時にはもう遅かった。
次の瞬間、全身に衝撃が来る……はずだった。
「危ない」
低い声と一緒に、腰を強く引き寄せられた。
鼻先に触れたのは、ホワイトフローラルの柔軟剤の匂い。
……え?
「総長、今の…」
そこにいたのは…九条朔だった。
鳳岳園でも有名な不良。
喧嘩が強く、無愛想で、誰とも群れない男。
なのに彼は、私を支えたまま、皺ひとつないハンカチを差し出してきた。
「足、捻挫してるかも。シップ貼る?」
「……なんで、そんなの持ってるの」
「常備。怪我する人多いから」
クセになるから貼っとくとも言った
意味が分からない。
不良が湿布を持ち歩く世界線、聞いてない。
周囲がざわつく。
総長が突き落とされかけた
しかも九条朔に助けられた。
恥ずかしさで顔が熱くなる前に、私は彼を睨んだ。
「放して。私は総長よ」
「知ってる」
九条朔は、すぐに手を離した。
でも視線だけは、逃がさなかった。
「総長だから言うけど」
彼はしゃがみ込み、私の膝に手当てを始める。
止める間もなかった。
「無理して立つと、また落とされるよ」
「……余計なお世話」
「そう?」
淡々と、でも優しく。
その手つきは、喧嘩慣れした不良のものじゃなかった。
私は知っている。
自分がドジだということも、強がってるだけだということも。
だからこそ、総長でいなきゃいけない。
「九条」
名前を呼ぶと、彼は少しだけ目を見開いた。
「私を甘く見るな。ここでは――」
「甘く見てない」
被せるように言われて、言葉が止まる。
「守りたいと思ってるだけ」
その一言が、胸の奥に刺さった。
守る?私を?
鳳岳園で、それを言える人間がどれだけいる?
「……それは命令?」
「違う」
九条朔は、ほんの少し困ったように眉を下げた。
「俺、こういう気持ちが何か分からない。ただ……」
立ち上がり、私に視線を合わせる。
「総長が負けるの、俺は見たくない」
ざわめきが、完全に止まった。
この学園で一番強い女が、一番無防備な瞬間を見せた相手。
それが、不良の九条朔。
その時、はっきり分かった。
この学園で、ヒロイン力が一番高いのは――私じゃない。
――ただしそれは、九条朔がそばにいる時に限る。
そんな噂が、最近になって校内で囁かれ始めている。
ちっ、馬鹿馬鹿しい。
総長は私だし、守られる理由なんてどこにもない。
鳳岳園は、名前だけは上品だが中身は弱肉強食の学園だ。
派閥、縄張り、序列。
違う派閥の2人がすれ違うだけで空気は凍る
言葉より先に肩がぶつかる
教師はいるが機能していない
入学初日でそれを理解できなかった生徒は、遅かれ
早かれ居場所を失う。
だから私は強くなった。
拳も、覚悟も、総長としての立場も。
屋上に集まる視線を感じながら、腕を組む。
これが“総長の姿”だ。
階段を降りる
――その瞬間だった。
「…っは?」
背中を押した、大きな手の感触がたしかにあった
視界が傾く。
しまった、と思った時にはもう遅かった。
次の瞬間、全身に衝撃が来る……はずだった。
「危ない」
低い声と一緒に、腰を強く引き寄せられた。
鼻先に触れたのは、ホワイトフローラルの柔軟剤の匂い。
……え?
「総長、今の…」
そこにいたのは…九条朔だった。
鳳岳園でも有名な不良。
喧嘩が強く、無愛想で、誰とも群れない男。
なのに彼は、私を支えたまま、皺ひとつないハンカチを差し出してきた。
「足、捻挫してるかも。シップ貼る?」
「……なんで、そんなの持ってるの」
「常備。怪我する人多いから」
クセになるから貼っとくとも言った
意味が分からない。
不良が湿布を持ち歩く世界線、聞いてない。
周囲がざわつく。
総長が突き落とされかけた
しかも九条朔に助けられた。
恥ずかしさで顔が熱くなる前に、私は彼を睨んだ。
「放して。私は総長よ」
「知ってる」
九条朔は、すぐに手を離した。
でも視線だけは、逃がさなかった。
「総長だから言うけど」
彼はしゃがみ込み、私の膝に手当てを始める。
止める間もなかった。
「無理して立つと、また落とされるよ」
「……余計なお世話」
「そう?」
淡々と、でも優しく。
その手つきは、喧嘩慣れした不良のものじゃなかった。
私は知っている。
自分がドジだということも、強がってるだけだということも。
だからこそ、総長でいなきゃいけない。
「九条」
名前を呼ぶと、彼は少しだけ目を見開いた。
「私を甘く見るな。ここでは――」
「甘く見てない」
被せるように言われて、言葉が止まる。
「守りたいと思ってるだけ」
その一言が、胸の奥に刺さった。
守る?私を?
鳳岳園で、それを言える人間がどれだけいる?
「……それは命令?」
「違う」
九条朔は、ほんの少し困ったように眉を下げた。
「俺、こういう気持ちが何か分からない。ただ……」
立ち上がり、私に視線を合わせる。
「総長が負けるの、俺は見たくない」
ざわめきが、完全に止まった。
この学園で一番強い女が、一番無防備な瞬間を見せた相手。
それが、不良の九条朔。
その時、はっきり分かった。
この学園で、ヒロイン力が一番高いのは――私じゃない。