離婚前提のはずが、策士な弁護士が離してくれません。
惺久のことをどう思っているか、なんて考えなくて良いことだ。
彼は真面目で良い人、弁護士として優秀な人。それだけわかっていれば良い。
深く知る必要なんてない。
一年限りで離婚するのだから。
「……か。六花!」
急に名前を呼ばれてハッとした。
顔を上げると、純白のタキシードに身を包んだ惺久が六花の顔を覗き込んでいた。
「どうした? 具合でも悪いか?」
「……あっ、いえ」
今日は日を改めた惺久の衣装選びの日だった。
夏芭に聞かれたことがあの日から数日経っても、ずっと頭の中でグルグルしているせいで、ぼうっとしてしまっていた。
「ごめんなさい、何でもないです。そのタキシード、よくお似合いです」
「そうか。白と黒ならどっちが良いかな」
「どっちでも似合うと思いますけど、いつもは黒いスーツなので白い惺久さんは新鮮ですね」
「白い俺って」
六花の言い方がツボにハマったのか、惺久はくつくつ笑っていた。
「そんなに笑わなくても……!」
「いや、すまない。これにしよう」
惺久は今着ている一着だけで決めてしまった。
その時夏芭が言っていた気持ちが少しわかったような気がした。
「他にも着てみなくていいのですか?」
「サイズさえ合っていればなんでもいい。カラードレスは何色にしたんだ?」
「マリンブルーと白地に花柄です」
夏芭が当日まで秘密にして驚かせようというので、惺久にドレスの写真は見せていない。