ここで私は、明日の私を待つ
「いくら運動音痴だからって、あれはないよね」


四限の体育が終わり、教室に向かっている私たち。


ここで出るのはやっぱり、さっきの川崎の話題だ。


「アイツわざとぶつかってきたんじゃないの?」


ふと私がつぶやいた。


一瞬だけシーンとなった。


しかしすぐに、咲希が口を開いた。


「うわーマジか。アイツ最低すぎでしょ」


咲希に続いて、佳子や杏奈も愚痴を言い出した。


「そうかもしれないね。うん、やっぱアイツ嫌い」


「川崎のくせにウザすぎるんですけどー」


こんな話をしながら教室に戻ると、みんなお昼ご飯を食べていた。


そして、ちょうど川崎は自分のカバンを机の上に置いた。


あんたも今から弁当を食べようと思ってるかもだけど、私たちが捨ててやったんだよ。


心の中でそうつぶやいて、こっそり笑った。


「おっ、弁当取り出したよ」


教室のドアからこっそり、川崎の様子をうかがう。


「袋開けた!」


そして弁当箱を開くと、何も入ってないっていうオチ。


川崎の反応が楽しみで、心臓の音が聞こえそうなくらいに脈打つ。


いよいよ川崎が、蓋を開けた。


川崎は手で口元を覆って、動揺している様子だ。


「せっかくお母さんが作ってくれたのに…」


微かにこんな声が聞こえた。


「面白!ちょーウケるんですけど」


「ガチ最高だわ」


「杏奈の仕返しってことで」


やっぱり弁当の中身を捨ててやって正解だった。
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