海棠/カイドウ〜哀をなくした不遜な軍師と、愛しき共謀者が綴る備忘録〜
Prologue 19歳、人生、終焉の時
この日、1日のスタートは確かにいつもとは少しだけ違っていた。

いつもは頼ることもなかった、スマホのアラームを消して二度寝をしてしまったこと。
初めての遅刻で心がザワザワとしていたこと。

新しいスニーカーから、慣れたトレーニングシューズに履き替えたこと。

裏路地から堤防沿いへ抜けて、並木道を歩いていったこと。

桜の散った花びらが⋯道を覆う中で、たった1本だけ、美しいピンク色の花を満開に咲かせたその木に、思わず目を奪われたこと。

人は、幾つもの場面で小さな選択をしてその道を進んでいく。この日常で、ありふれたその事象を無意識にこなしていっているのだ。
だから、だから⋯

この日起きてからの30分。
たったそれだけの間に、一体どの選択を誤ってしまったのだろう。



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