海棠/カイドウ〜哀をなくした不遜な軍師と、愛しき共謀者が綴る備忘録〜
軍の者たちは、勇敢で非常に勤勉であった。
小娘が言うことを⋯掘り下げて尋ねては、実際にやってみる。
それに応えなければ、と、相乗効果となって⋯こちらも必死になる。
「サッカーの戦略は、まさに兵法の陣に繋がる側面があります」
そう説明しながら、戦術ボードに代えて、地面へとフォーメーションを書いていく。
「例えば4-4-2の布陣で行くとします。けれど、攻撃時にはそれを3-2-5に変化させる。局面に応じてシステムを可変させて陣形を流動的に動かす」
人を表す◯の絵を、書いては消し、書いては消して⋯語る。
「かの有名なる諸葛亮が考案した【八卦の陣】は、まさにこれです。敵の出方に合わせて、陣形を絶えず変化させる」
もっともっと後の時代の話だが⋯、敬愛する彼の陣形は、私が意するそれとピタリと一致していて⋯自ずと語らずとは居られなかった。
「では、試合を再開してみてください。一方だけのチームに、この陣形の極意を伝えて実践しましょう」
監督が指揮を執る。その感覚を⋯体現していた。血が滾るような、熱さ。
「八卦の陣を踏襲した戦略です。あなたとあなた、ディフェンスをしながら⋯中盤のこの辺りに敵を誘い込んでください。そうしたら、囲い込んで奪う⋯守備ブロックの陣を発動します」
駒を動かし、盤上のチェスのように⋯。
「孤立させてしまうのです」
敵の◯を、ピンっと指で弾いて。狙いを定める。
「それと同時に、逆サイドにいる貴方は、走り込んでいます。
そうすると、彼がいたこのスペースをカバーする者がいなくてはいけません。つまり―⋯それぞれが連携し、1カ所が攻められたら他が補う。【カバーリング】と言います。完璧な相互作用が必要だと肝に銘じて下さい。先ほど触れた、オフ・ザ・ボールがいかに大事かが、よく分かると思います」
八卦の陣。8つの部隊が互いに連携し敵の出方に合わせて陣形を変えていく⋯究極の、隙のない陣。わざと敵を陣に追い込み、孤立させて⋯殲滅させる。各々の判断とチームワークとがものを言うのは⋯サッカーの戦術とピッタリと符合する。
私が施していった、様々な戦略は―⋯ことごとく相手を術中に嵌めて。局面をひっくり返す奇策となって現れていた。
まるで⋯その戦を、軍を統括する軍師の気分だ。
小娘が言うことを⋯掘り下げて尋ねては、実際にやってみる。
それに応えなければ、と、相乗効果となって⋯こちらも必死になる。
「サッカーの戦略は、まさに兵法の陣に繋がる側面があります」
そう説明しながら、戦術ボードに代えて、地面へとフォーメーションを書いていく。
「例えば4-4-2の布陣で行くとします。けれど、攻撃時にはそれを3-2-5に変化させる。局面に応じてシステムを可変させて陣形を流動的に動かす」
人を表す◯の絵を、書いては消し、書いては消して⋯語る。
「かの有名なる諸葛亮が考案した【八卦の陣】は、まさにこれです。敵の出方に合わせて、陣形を絶えず変化させる」
もっともっと後の時代の話だが⋯、敬愛する彼の陣形は、私が意するそれとピタリと一致していて⋯自ずと語らずとは居られなかった。
「では、試合を再開してみてください。一方だけのチームに、この陣形の極意を伝えて実践しましょう」
監督が指揮を執る。その感覚を⋯体現していた。血が滾るような、熱さ。
「八卦の陣を踏襲した戦略です。あなたとあなた、ディフェンスをしながら⋯中盤のこの辺りに敵を誘い込んでください。そうしたら、囲い込んで奪う⋯守備ブロックの陣を発動します」
駒を動かし、盤上のチェスのように⋯。
「孤立させてしまうのです」
敵の◯を、ピンっと指で弾いて。狙いを定める。
「それと同時に、逆サイドにいる貴方は、走り込んでいます。
そうすると、彼がいたこのスペースをカバーする者がいなくてはいけません。つまり―⋯それぞれが連携し、1カ所が攻められたら他が補う。【カバーリング】と言います。完璧な相互作用が必要だと肝に銘じて下さい。先ほど触れた、オフ・ザ・ボールがいかに大事かが、よく分かると思います」
八卦の陣。8つの部隊が互いに連携し敵の出方に合わせて陣形を変えていく⋯究極の、隙のない陣。わざと敵を陣に追い込み、孤立させて⋯殲滅させる。各々の判断とチームワークとがものを言うのは⋯サッカーの戦術とピッタリと符合する。
私が施していった、様々な戦略は―⋯ことごとく相手を術中に嵌めて。局面をひっくり返す奇策となって現れていた。
まるで⋯その戦を、軍を統括する軍師の気分だ。