一夜だけの恋も、重い愛もいりません。〜添乗員しづの恋
 いったい、何があったんだろう?
 
 見てはいけないものを見た気がして、私は三宅くんから目をそらしてバスに戻った。
 
 それから数分遅れて、三宅くんが下を向いて乗車してきた。
 

「よぉ、兄ちゃん、あの片桐英子にフラれたのかぁ?」
「てか、あなた業界人なの?」
 
 三宅くんは 「……いえ……」と小さく答えただけで、それからは誰の相手もせずに、窓の方ばかりを見ていた。
 
 そんな彼を、蛯原さんがとても心配そうに見ていたし、岡田もミラー越しに様子を伺っている。
 
 私も気になりはしたけれど、あえて何も聞かなかった。
 人には、それぞれの事情がある。

 

 
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