一夜だけの恋も、重い愛もいりません。〜添乗員しづの恋
「岡田さん、桑崎さん、お世話になりました」
 
 三宅くんが丁寧にお辞儀をする。
 
 相変わらずの良い香りが、鼻先をくすぐった。
 岡田も顔を上げて、三宅くんを見つめている。
 
 握手を求められた私は、それに応えた。
 
「コンテスト、いい結果出たらいいですね」
 
「はい。自信はわりと有ります」
 
 言いながら、はにかんだ笑顔を浮かべる。
 三宅くんは、本当に綺麗な男性だ。
 
 断った事を、後悔してしまいそうなほど。
 
 そして、「あの」と、ちょっと言いづらそうに私にメモを渡した。
 
「……なんですか?」

「蛯原さんにも渡したんですけど。俺の連絡先。お二人の写真も撮らせて頂いたので、気が向いたら連絡ください。そしたら現物でもデータでもお送りします」
 
 蛯原さんが嬉しそうにしていたのはこれだったのか。
 
「分かりました。必ず連絡します」
 
 私がそう答えると、三宅くんは、岡田に、
 
「送り狼にならないでくださいね」
 
 
 と、あり得ない事を言って降りていった。


 
< 259 / 316 >

この作品をシェア

pagetop