一夜だけの恋も、重い愛もいりません。〜添乗員しづの恋
 沈黙が続く。
 
「三宅くんと連絡先交換しましたか?」
 
 なのでレポートを仕上げながら、どうでもいいことを岡田に聞いてしまった。
 
「してない… ふ…ぁ…何で?」
 
 乗客が居なくなって気が抜けたのか、岡田は大きなアクビをして答え、そしてガムを噛み始めた。
 
 眠いよね。昨夜も遅かったし。
 
 今からだって、私を降ろして、会社に戻って車両点検やら報告書やら仕事があるはずだし。
 
「三宅くんに会えなくなるから、寂しくないかなって」
 
「やけにアイツにこだわるな? 寂しいのはそっちだろ」

「私は、もう、男にはコリゴリですから」
 
「フェリーのあの男がそう思わせたんだろうな」
 
「……はい。当たりです」
 
  ああ、そうだ。
  美隆のこと、お礼言わなきゃ。
 
「あの、さっきは……」
「なら三宅をその気にさせるなよ、″必ず連絡します ″なんて、絶対に勘違いするだろうが」
 
 ありがとう、を言う前にダメ出しされて、ちょっとムッとする。
 
「何よ、そんなに三宅くんが心配なら、……好きなら、この連絡先に電話して告白でもしたらいいじゃない」
 
 
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