一夜だけの恋も、重い愛もいりません。〜添乗員しづの恋
 怒れない………。
 どんなに言い方が失礼で、優しさが欠けていても――胸が震えるくらいに嬉しかったから。


 そんなジンクスなら信じてみようかな。
 
「ほら、もう一つのジンクス。口、開けて花びら食えよ、好物だろ」
 
「草食動物じゃないっての」
 
 恋愛はもう無理だと諦めていた私が、心のどこかで求めていたもの――
 

 それは、限られた時間しか美しい花を咲かせられなくても、たとえ、それが過ぎてしまっても、枯れ朽ちるまで支え合える伴侶。
 
「これからも、よろしく………」
 

 春なのに、どこか冬みたいな夜空の下、私と岡田は、もう一度唇を合わせた。
 
 辛さのない、甘いだけのキスは、これからの長い旅の間、何度でもしたいと思った。

 死体はないと思うけど。

 満開の桜の木の下には、恋があった。






 ❀終わり❀




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