一夜だけの恋も、重い愛もいりません。〜添乗員しづの恋
 英子の紹介というツテだけでは、さほど新規の仕事は増えなかったし、
 
「え、なんであそこ辞めちゃったの? わけあり?」
 
 俺を、業界大手だった会社を裏切った、″愚か者 ″として捉える客もいたからだ。
 
 何より、スタジオ時代に営業的をしなくても仕事を回して貰えた事が仇となり、勘違いなプライドが仕事の邪魔していた。
 
 そうこうしているうち、
 
「最近、性欲がめっきり減ったのよね」
 
 英子が更年期とやらを迎えてしまった。


  ″一緒にいてくれるだけでいいの ″
 
 そう言っていたのが嘘みたいに、性行為を求めなくなった英子は、急激に俺への関心も薄れていったようだった。
 
「そのうち連絡するから」
 
 以後、英子からの連絡は途絶えた。
 
 英子の助けを失い、ますます仕事を選べなくなった俺は、危ない仕事を引き受けてしまい、クライアントがギャラ未払いのままトンズラするという不運にも見舞われた。
 
 それからは、写真への情熱も薄れて、カメラを持つことにも嫌気がさした。
 

 そして。
 独立して一年で、俺はとうとう事務所を畳み、地元の九州へ戻ってきた。
 
 俺に残されたのは、プライベートで見せる、桐英子のヌード写真だけ。
 
 それを見て、つくづく俺はこの女にハマっていたのだと思い知らされた。










< 54 / 316 >

この作品をシェア

pagetop