重力圏外のプロポーズ、軌道修正は不可能です~宇宙飛行士は恋に不器用~
昊が席を立つと、香織はすかさず結月の向かいに腰を下ろした。
笑顔は崩さず。けれど、その瞳は冷たく感じられる。
「……あなた、星野さんのこと、どれくらい知ってるんですか?」
「え?」
「彼がこれまで、どれだけの訓練を積んできたか、どれだけの責任を背負っているか、知ってるんですか? 宇宙飛行士って、ただの夢追い人じゃないんですよ。命を懸けて、国の期待を背負って、未来を切り拓く仕事なんです」
結月は言葉を失った。
突然の物言いに、呆気にとられながらも、彼女が伝えたいことの重みがどれほどのものか……。
「正直に言いますね。あなたが彼の人生に必要な存在だとは、私には思えません」
「……」
「彼には、もっと相応しい人がいる。同じ目線で、同じ未来を語れる人が」
「……そう、ですか」
結月は、必死に冷静を装おうとした。
けれど、胸の奥に冷たいものがじわりと広がってゆく。
少し前に昊の部屋で見た書籍の数々。
それが、彼女の言いたいことだと分かるからだ。