重力圏外のプロポーズ、軌道修正は不可能です~宇宙飛行士は恋に不器用~

「ありがとうございました。またのご来店をお待ちしております」

 結月がいつものようにお辞儀をすると、一組の親子が店を出ていった。
 窓の外が群青に染まりはじめ、カフェ・ルミエールは閉店準備に向けて静かに息を整えていた。

 カウンターの奥で、結月はふぅと小さく息を吐く。
 元彼・篤史(あつし)のしつこさには慣れていたつもりだったが、やはり心はざわついた。

(もう、終わったはずなのに。なぜ、あの人はそれを受け入れてくれないのだろう)

「すみません、お会計をお願いします」

 その声に、結月は顔を上げた。
 最後のお客様。
 昼過ぎからずっといた男性が、レジ前に立っていた。

「千八百円になります」

 レジを打ちながら、結月はふと彼の顔を見た。
 彼の目は、まっすぐに結月を見つめていた。

「お支払方法は……?」

 結月はレジの操作パネルに指をかざし、スマホ決済なのか、現金払いなのか。
 もしくは別の決済方法なのか、返答を待っていると——。

「これを」
「……え?」

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