重力圏外のプロポーズ、軌道修正は不可能です~宇宙飛行士は恋に不器用~

「うん。最新版は“結月の怒りポイントVer.3.2”」
「アプデされてる!!」

 結月が思わず吹き出す。

「ちなみにVer.3.1からの変更点は、“洗濯物を裏返しのまま出さない”が追加されました」
「……それ、初期から入っててよくない?」

 すかさず美羽がツッコむ。

「いや、Ver.1.0では“洗濯物を出す”こと自体が未実装だったから」
「星野家は今日も愉快だなぁ~」

 昊と美羽の会話を聞いていた常連客が、合いの手を入れるみたいに会話に入る。
 それ自体もこのカフェの日常と化していて、「他には~?」なんて声が返って来る。

「もう、ほんとに……!」

 結月は呆れたように笑いながら、昊の隣に立つ。
 その横顔を見つめながら、小さく呟いた。

「……この人の不器用な愛が、私の一番のご褒美です」

 昊は一瞬だけ手を止めて、照れたように小さく咳払いをした。
 二人の間に流れる空気は、穏やかであたたかくて、どこまでも心地よい。

 重力のない宇宙で、昊は愛を知った。
 そして今、彼は地球で、愛する妻と共に生きている。

 それは、もう軌道修正なんてできないほど、確かな『恋』だった。

 ~FIN~

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