【中編】ベストフレンド
「拓巳、おまえアホかっ!?
この時期に3日も有給だと?
この業界入って何年目だお前。冗談もたいがいにしろ!!」
この時期に3日の有休なんて正気の沙汰じゃない事も、誰かがそのしわ寄せを受ける事も解っている。
でも今はそんなこと言っている場合じゃないんだ。
「俺にとっては人生の一大事なんです。
今行かなかったら俺は一生後悔する。
俺の人生がどうなってもいいって言うんですかっ!」
フロア―全体に響き渡るほどの大声で叫んだ俺に、部長を始め、その場にいた全員が息を呑んだ。
社内で俺が意外と短気だと知っているのは同期入社のヤツくらいだ。
その中でも人前でこんなに頭に血が上った俺を見た奴なんて、亜里沙と陽歌くらいだろう。
普段は巨大な猫を被っている俺は、上司や同僚には仕事ができて人当たりが良く穏やかな好青年のイメージで受け止められている。
だが今日に限っては巨大猫を蹴り飛ばし、好青年の仮面も吹き飛ばす勢いで、感情のままに部長に食って掛かっていた。
俺の様子が余りにも普段とかけ離れていた事に、部長も何かよほどの事情があると感じたのだろう。
特大の溜息と苦い笑顔のおまけつきで有給申請書をくれた。