ヤンデレ腹黒な仮面作家は激重な執着溺愛を隠さない
プロローグ
 ときめきは恋に限らない。
 今日は待望の新刊の発売日。期待は全身を満たし、彼女の足どりは自然と早くなる。
 お目当ての本はすぐに見つかった。新刊コーナーの平台に山と積まれていて、自分の好きな本が売れ筋であることが嬉しくなる。

「これは積ん読にはできないなあ」
 うふふ、と笑いをこぼして手に取り、表紙を眺める。
 スーツを着たかっこいい男性が照れる女性を抱きしめる姿がたまらない。今回も素敵な溺愛を堪能できそうで、休みにわざわざ買いに来た価値があるというものだ。

 ほかにも買いたい本があって、新刊コーナーを眺める。
 色も質感もさまざまな本たち。きらきらと虹色に光ったりエンボス加工されていたり、帯をめくると隠しキャラが出て来たり。文字の配置もデザインもなにもかもが刺激的で、どれも読みたくなる。本を作る方々の工夫にはいつもうなるばかりだ。
すべてを買いたい誘惑を断ち切って探していたファンタジーとミステリーを手に取って振り返ったとき、どん! と誰かとぶつかった。

「きゃ!」
 勢いよく倒れた拍子に、本が一冊、転げ落ちた。
「すみません」
 謝りながら立ち上がると、落とした恋愛小説を彼が拾ってくれていた。

「ありがとうござ……」
「くだらねー本」
 男性は溺愛小説を見て憎々し気につぶやく。
 彼女はあっけにとられて彼に目を向けた。黒髪で背が高い。顔は整っているが目つきの悪さがすべてを台無しにしていた。加えて、発言の内容がすこぶる悪い。
「返してください」
 ムッとしたのを隠さず手を差し出すと、指でつまんでひらひらと振られた。

「こんな幼稚なもん、どこがいいんだ」
「失礼な!」
 ばっと奪い返すと、男は鼻白んだように目を細めた。

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