ヤンデレ腹黒な仮面作家は激重な執着溺愛を隠さない
「耀理、ここにいたんだ。もうすぐ仕事終わるよな」
 すでに聞きなれた声に、耀理ははっとした。
 振り向くと、スーツ姿の史弥が立っている。

「悪い、接客中か?」
「耀理のお知り合いですか? 初めまして、耀理の親友の新田紀香です」
 紀香が耀理から手を離し、すかさず挨拶をした。すでに黒い笑みは消えて、かわいらしい。
 変わり身の早さにまたぞっとした。

「親友?」
 聞き返す彼に、紀香は頷く。
「高校のときからの親友なんです。ねえ!」
 否定できなくて、耀理は目をそらした。

 彼女はこういう自分を熟知しているのだ。
 たとえば慎一を奪ったことも、耀理なら共通の友人に言わないとわかっていたのだ。紀香自身の名誉が傷付くことはしない。

「親友ねえ」
 答える史弥に、わかって、と耀理は祈る。最近、彼女の話をしたばかりだ。あのとき名前を出していただろうか。出したとして、彼が覚えているだろうか。親友を名乗る彼女こそがその人物なのだとわかってほしい。

 だけど、とまた思う。
 恋人を奪って罵った人物が会いに来るわけがないと思われたら、別人だと判断するだろう。
 紀香はイケメンが大好きだから、史弥はターゲットになりそうだ。

 だが、もうすでに慎一と結婚前提でつきあっているのに。だけど、彼とはまだ結婚したわけではない。
 思考がぐるぐると堂々巡りを繰り返す。
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