ヤンデレ腹黒な仮面作家は激重な執着溺愛を隠さない
「親友にまだ言ってなかったのか?」
 挑発的な声に、耀理は確信した。彼はわかってやっている。
 どこまで合わせるべきなのか、とっさに判断できなかった。慎一のときには彼と仲のいいふりができたのに。

「で、なにを読んでるって?」
 耀理の肩を抱いて紀香に向き直り、史弥が言う。
「えっと、キャムキャムとか、ヴィーヴィーとか……」
 かわいく小首をかしげて言うが、史弥は鼻で笑う。

「雑誌じゃねーか。一般的に言う本とは違うだろ。活字のものは読んでんのか? マンガは含めるなよ」
「そ、それは……『夜光列車』とか、『無限青年』とか」

「どっちも映画になったやつだな。本を読んだなら『無限青年』のラスト、言えるか? 映画とは違うラストだぞ」
「え、えっと……なんだっけ、だいぶ前に読んだから忘れちゃった」

「読んでないんだろ。無駄に見栄をはるのやめたら」
 侮蔑を向けられ、紀香の目が吊り上がった。口元はわなわなと震えている。
 男性にこんな顔を向ける彼女を見るのが初めてで、耀理はただ驚いた。

「本当は耀理をいたぶりに来たんだろ、元親友さん。耀理のお古の男との結婚、おめでとう」
 史弥の口の悪さに唖然として彼を見た。彼は敵対心にあふれて紀香をにらんでおり、耀理の肩に置いた手にぎゅっと力を込める。それだけで彼の守ってくれようとする気持ちが染みるほどに伝わって来た。。以前は怖かった彼が、今はものすごく頼もしい。

「で、本当はこいつが元カレを奪った元親友だよな?」
 確認され、耀理は一瞬迷ってから、頷いた。
 紀香は耀理をにらんだあと、悲し気に目と眉を下げて、憐れみを乞うように史弥を見る。
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