ヤンデレ腹黒な仮面作家は激重な執着溺愛を隠さない
「それ、誤解なの」
「どういうことだ?」
「耀理が幸せになれる相手かどうか、確認したの。そうしたら耀理と別れて私とつきあうって言い出して……こうなったら私が悪者になって耀理を守るしかないって、そう思ったの」
 紀香は潤んだ瞳で史弥を見つめる。

「友情が壊れても耀理を助けられるなら、と思ったわ。だけどやっぱり友達でいたくて……だから今日、会いに来てしまったの」
 耀理ははらはらとその様子を見守った。反論したいのに、喉がはりついたように声が出せない。

「つまり耀理のために誘惑した、と?」
 史弥が確認するように聞き、紀香は頷いた。
「耀理を傷付けたと思うと心が苦しい。けど、本当に耀理のためを思って」
 彼女の様子はとても演技とは思えない。

 だけど、と耀理は必死に自分を止める。
 自分を罵った姿もまた演技とは思えなかった。誰もいないところで見せたあれこそが本性だろう。実際、紀香は終始、史弥を見つめていて、本心に耀理などかけらも存在していないのは明白だ。が、史弥が気付いてくれるのかどうか。

「そんな言い訳でどうにかなると思ったのか? 謝りもしないで」
 史弥に指摘され、耀理はぎゅっと目を閉じた。確かに彼女は一言も謝ってなくて、切なくなった。
「向こうが勝手に私を好きになっただけなの……耀理が怒るのはもっともだけど……私たち、もう親友じゃいられないの?」
 悲し気な声に耀理の胸がずきっと痛む。

 今の彼女をみたら、たいていの男は彼女の味方をするだろう。
 ここで彼女を拒否したら、史弥にどう思われるだろう。
 史弥は彼女をどう思っているだろう。
< 57 / 121 >

この作品をシェア

pagetop