ヤンデレ腹黒な仮面作家は激重な執着溺愛を隠さない
「最初は軽いやつにしたよ。あとは好きに頼んで」
「ありがとう」
 お疲れ様、と乾杯してからひと口をいただいた。さわやかな味わいで、気持ちまで清々しくなる。
 お礼を言わなくちゃ、と耀理は居ずまいを正してから彼に言う。

「今日は本当にありがとう」
「どうってことない。けど、耀理が傷付く前に守りたかった」
 声が優しくて、耀理の目が潤む。だからすぐに話を変えた。

「今日はどうして休んだの? シフトでは出勤だったよね」
「解英社とちょっともめてね。本社まで行っていたんだ」
 慎一の勤める出版社だ。

「……私のせい? なにか言われた?」
 慎一から史弥が助けてくれたせいだろうか。だがあのとき、彼は作家だとは言っていないし、ましてやペンネームも名乗っていない。それとも史弥のことは知っていたのだろうか。

「違うよ。下手に隠しても心配するだろうから言うけど。今後は解英社と仕事をしない、と言ってきた」
「なんで!?」

「あなたの元カレが嫌いだから。だけどそんな理由を言えないから、向こうが納得するわけもなくてさ。それで疲れて、耀理の顔を見たくなった」
「今後に差し支えるんじゃ……」

「関係ない。出版社はたくさんあるし、編集とケンカして絶縁する作家もいる。狭い業界だから、良い噂も悪い噂もすぐ回るが、俺は新人じゃないし、ほかで仕事があるから言えたってのはある」
 平然としている史弥に、耀理はおろおろとうろたえる。
< 60 / 121 >

この作品をシェア

pagetop