ヤンデレ腹黒な仮面作家は激重な執着溺愛を隠さない
「すみませーん。作家の月見猫千夜がこの店にいるって聞いたんですけどぉ」
 客の声に、耀理と宏は振り向く。

「取材で一時的に勤務してらっしゃいましたけど、もう辞められましたよ」
「そうなんですか……」
 店長の答えに、客はしょんぼりとして帰っていく。

 こういう問い合わせが何度もあり、そのたびに仕事の手が止められてしまう。
 すでにこういう形で迷惑をかけている。アカウントの乗っ取りがなければなかった事態だ。

 本を愛しているのに、もはや自分はお店の邪魔者でしかない。
 だったらなおさらここを去るべきだ。
 耀理は固く決意した。



 翌日、目が覚めた耀理は、スマホの時計を見てはっとした。
「やば! 遅刻!」
 がばっと起きてから、はっとする。
「休みをもらんたんだった……」
 へなへなとベッドに倒れ込み、スマホを手にとる。

 午前十時。
 のろのろと起き出してトーストを作った。ミルクたっぷりのコーヒーと一緒に胃に流し込み、着替えもせずに本棚に入れっぱなしだった一冊を手に取る。

「せっかくだから積ん読を解消しようかな」
 ベッドに腰かけて読み始めるが、まったく集中できなかった。
 頭に浮かぶのは史弥のことばかり。
 彼はどうしているだろう。順調に書けているだろうか。
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