after7は笑えない


「うーっす」 
「オツカレサマー。」


ゴミ捨て場のある裏の路地。


情緒あふれるネオン街の裏側は、今やサイバーパンクと持てはやされている。『風俗街の本性』などとは誰も呼ばない。


白、時々、紫のネオンで彩られるうちの店、『QUON(クオン)』はキャバクラだ。


その隣には、黒と赤の外壁が交互に並ぶホストクラブ、『Mo-mennto(モーメント)』があって。


キャバとホストじゃ同じ土俵とは呼べないのだけれど、同じ系列店ということで、いつも売上金額を張り合っていた。


「駅でキラ君とピンクロリータが歩いてるの見たよ。あれ彼女?」
  
「同伴出勤な。おや?妬いた感じ?」

「あ、ほっぺにピンクのキラキラついてる。」

「とって。」

「クイックルワイパーで?」

「できればミウさんの可愛い“お手て”で。」

「両手可燃ゴミで塞がってるから無理。」


だから『QUON(クオン)』のNo.1ホステスである、私ことミウ(源氏名)と、『Mo-mennto(モーメント)』のNo.1ホストであるキラ(源氏名)も、ライバル的なあれ。


「あのロリータ、ここんとこ毎日同伴で糞だるい。」


店では美麗王子で突き通しているキラ君が、ピンクのキラキラを親指で拭って、それをなぜか一舐めする。


だるい。のに舐める意図は分からず。きもい。から私の顔がゆがんでしまう。


壁にもたれて、ベージュスーツのズボンから電子タバコを取り出し。腕を組み、唇の隙間からありったけの有害物質をまき散らす様は愚の骨頂。


アウトローなNo.1ホストの引き立て役にはちょうど良い。 
 

 
「春は稼ぎ時じゃん。」

「宣誓。本日3ケタいかせていただきやす。」

「その言葉、そっくりそのまま返させていただくわ。」   


高身長なキラ君が、共有のダストボックスまでの道をふさいでいる。邪魔すぎて、“コノ野郎”を張り付けた笑顔で見上げてやった。


美麗王子?私を見下す様は、あっぱれ魔界の帝王。


七対三の黒すぎるゆる髪にヘーゼルイエローの瞳は、恐らくタワーオブテラーの屋上に立ちマントを翻すバーチャルキャラに近しい。


前髪から覗く目元のクマは、世の中を達観視しすぎてノイローゼになったに違いない。

  
 
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