愛が重いNo.1ホストに追われています。
( ´ʖ̼`).。oஇ
「成世、俺の遅れをとるな。」
「はい。」
「そこはイエッサー大佐とか言ってノリノリでこい。」
「(そんなことに気力使いたくない。)」
西條さんとやってきたのは県内でも有名な総合病院。
電子カルテ用のタブレット導入のため、今日、私たちは見積書を持って訪れた。これから大事な商談に出陣だ。
会議室に通されたのだが、そこにはなぜか、見知らぬスーツの男性2人組、つまり他の会社の人間がいたのだ。
総合病院の事務長が、すぐに状況説明に入る。
「すみません。うちの院長の意向で、2社様同時査定を行いたいと思います。ただいま院長が参りますので、しばらくお待ち下さい。」
いかにも、一般社会のマナーを無視した病院らしいやり方だ。つまり、この場で他の競合とプレゼンし合えということだ。
「初めまして、まさかALISSさんと競合だなんて思いもしませんでしたよ。」
「ええ、こちらこそ!同業のフォーカスさんとお会いできるなんて光栄です!」
OA機器業界ではトップを誇る株式会社フォーカス。
西條さんよりも年上の男性であろう、高濱《たかはま》さんと名刺を交換し、それからもう一人の男性とも挨拶を交わす。
「ALISSの成世です。よろしくお願いします。」
「フォーカス営業部の本浪《ほんなみ》です。本日はよろしくお願いします。」
本浪さんの名刺入れは、一流ブランドではなさそうだけど、いい革であることには違いない。
キズのないハリのある革の素材が見えて、自分の古びた名刺入れをみせるのが恥ずかしくなった。
今までそんなこと、微塵も感じたことがなかったのに。七三倉に言われた言葉に、初めて気付いた名刺入れという身だしなみ。
お婆ちゃんの形見のジンクスという呪いに縛られているだけ、という現実が直に頭に響いている気がした。
「今日はお互い頑張りましょう。」
本浪さんに名刺入れをまじまじと見られないよう、適当に声をかけてみる。
すると本浪さんからは、真面目な声色でこう返された。
「ええ。ですが、負けませんから。」
“本浪《ほんなみ》 一斗《いっと》”
青味のあるシルバーベージュの髪、好印象をもたらすナチュラルショートは彼の実直さをうかがわせる。
この時点で、私も彼も、事なかれ主義でないことが証明された。
――――――…………
結論から言って、タブレットのスペックも提示金額も大してフォーカスと変わりはない。
ただ私も本浪さんのプレゼンも、熱が入りすぎて他のメンバーが若干引き気味だった。
でもこの総合病院はうちの古参客であり、長い付き合いを重んじる点からみても、うちが一歩リードだと思う。


