愛が重いNo.1ホストに追われています。


( ´ʖ̼`).。oஇ


「成世、俺の遅れをとるな。」

「はい。」

「そこはイエッサー大佐とか言ってノリノリでこい。」

「(そんなことに気力使いたくない。)」

   
西條さんとやってきたのは県内でも有名な総合病院。


電子カルテ用のタブレット導入のため、今日、私たちは見積書を持って訪れた。これから大事な商談に出陣だ。


会議室に通されたのだが、そこにはなぜか、見知らぬスーツの男性2人組、つまり他の会社の人間がいたのだ。


総合病院の事務長が、すぐに状況説明に入る。


「すみません。うちの院長の意向で、2社様同時査定を行いたいと思います。ただいま院長が参りますので、しばらくお待ち下さい。」  

 
いかにも、一般社会のマナーを無視した病院らしいやり方だ。つまり、この場で他の競合とプレゼンし合えということだ。


「初めまして、まさかALISSさんと競合だなんて思いもしませんでしたよ。」

「ええ、こちらこそ!同業のフォーカスさんとお会いできるなんて光栄です!」 


OA機器業界ではトップを誇る株式会社フォーカス。


西條さんよりも年上の男性であろう、高濱《たかはま》さんと名刺を交換し、それからもう一人の男性とも挨拶を交わす。


「ALISSの成世です。よろしくお願いします。」

「フォーカス営業部の本浪《ほんなみ》です。本日はよろしくお願いします。」

  
本浪さんの名刺入れは、一流ブランドではなさそうだけど、いい革であることには違いない。


キズのないハリのある革の素材が見えて、自分の古びた名刺入れをみせるのが恥ずかしくなった。


今までそんなこと、微塵も感じたことがなかったのに。七三倉に言われた言葉に、初めて気付いた名刺入れという身だしなみ。


お婆ちゃんの形見のジンクスという呪いに縛られているだけ、という現実が直に頭に響いている気がした。 


「今日はお互い頑張りましょう。」


本浪さんに名刺入れをまじまじと見られないよう、適当に声をかけてみる。


すると本浪さんからは、真面目な声色でこう返された。


「ええ。ですが、負けませんから。」 
  

“本浪《ほんなみ》 一斗《いっと》”


青味のあるシルバーベージュの髪、好印象をもたらすナチュラルショートは彼の実直さをうかがわせる。
    

この時点で、私も彼も、事なかれ主義でないことが証明された。


――――――…………

 
結論から言って、タブレットのスペックも提示金額も大してフォーカスと変わりはない。


ただ私も本浪さんのプレゼンも、熱が入りすぎて他のメンバーが若干引き気味だった。


でもこの総合病院はうちの古参客であり、長い付き合いを重んじる点からみても、うちが一歩リードだと思う。






< 36 / 36 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:0

この作品の感想を3つまで選択できます。

  • 処理中にエラーが発生したためひとこと感想を投票できません。
  • 投票する

この作家の他の作品

破断直後のEt cetera

総文字数/111,915

恋愛(オフィスラブ)124ページ

第8回ベリーズカフェ恋愛小説大賞エントリー中
表紙を見る 表紙を閉じる
婚約破断後に一夜限りのetc.。
Re:Romance

総文字数/119,963

恋愛(オフィスラブ)111ページ

第8回ベリーズカフェ恋愛小説大賞エントリー中
表紙を見る 表紙を閉じる
モデルとして一斉を風靡した叶恵里夏28才。引退後は地味子を装い、中古車販売会社に勤務していた。 同じ会社の新車販売営業として働く実来心晴26才とは、高校生の頃一夜の関係を持った間柄。その時、里夏は心晴のことを「一夜限りの関係」と割り切り潔く振った過去から、現在会社では心晴にその過去を利用し脅され、セフレ関係を強要されていた。 しかし本当は、高校生の頃里夏が心晴に「一夜限りの関係」だと言ったことには理由があった。
こっから先ははじめてだから

総文字数/95,809

恋愛(純愛)151ページ

スターツ出版小説投稿サイト合同企画「1話からの長編大賞」ベリーズカフェ会場エントリー中
表紙を見る 表紙を閉じる
𓂂𖡼.𖤣𖥧𓈒◌܀𓂃𓂂𖡼.𖤣𖥧𓈒◌܀ 小さな不思議ちゃんと、冷淡冷徹無表情の関西弁スパダリ先輩との日々。 (情報量過多) 𓂂𖡼.𖤣𖥧𓈒◌܀𓂃𓂂𖡼.𖤣𖥧𓈒◌܀

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品をシェア

pagetop