妹に代わり泉に身を投げた私、湖底の街で愛を知る 〜虐げられた私が幸せを築くまで〜
 結局、ノアと合流したのは昼食後のことだ。
 昼食中に話を聞くと、ノアは私たちと別の場所を巡っていたらしく、楽しそうに話をしている。
 そして三人で回っていない場所を巡る。

「ねぇ、エーヴァ! あっち行こう?」
「ええ、行きましょう」
「アダン様もほら!」

 ノアの右手に私が、左手をアダン様が陣取り手を繋ぐ。
 横目で二人を見ていると、まるで親子のようだ。アダン様がお父様、ノアが子ども、そして私は――
 そこまで考えて顔が赤くなった。自分は何を考えたのか、と頭を左右に振って思考を追い出す。
 けれども、一度頭に浮かんでしまった思いは、残念ながらすぐに消えることはなく……頭に残ってしまう。

 そんなもだもだしている私に気がついたのは、アダン様だった。

「大丈夫か?」
「あ……えっと……はい、大丈夫ですっ」

 少し声が上擦ってしまった。何か聞かれるだろうかっと思ったけれど……どうやらアダン様それ以上追求することはないようだ。
 顔を正面に向けたアダン様に私は胸を撫で下ろす。だから気づいていなかった。隣でノアが満面の笑みを見せていたことに。

 しばらくまつりを見て回ったり、軽食をとったり……祭りを充分堪能したあと、アダン様はなぜかお城に向かっている。
 私が首を傾げていると、お城の前でエルマーさんと出会った。どうやら警備について確認していたらしい。
 彼を見つけたノアは、笑みを浮かべながらエルマーさんの元に走って行った。

「エルマーさん!」
「おお、ノア! 元気そうだな!」

 飛び跳ねながら喋っているノア。私はそんな彼を微笑ましげに見つめていると、いつの間にか話が進んでいたようだった。

「え、いいの?」
「ああ、こっちも綺麗に見えるぞ!」
「ねえ、アダン様! 僕エルマーさんと見ていい?」

 そう訊ねられたアダン様は、了承を告げる。なんの話だろうか、と首を傾げていると……話が終わったのか、私はアダン様に連れられていく。慌てて後ろを振り向くと、そこにはエルマーさんとノアが手を振って見送っていた。二人は楽しげだ。
 綺麗に見える、という言葉を聞いて、これから何が起こるのか私は首を傾げた。
 
「アダン様、どちらに行かれるのでしょうか?」
「……そうか、君は知らなかったな。これから魔術花が上がるんだ」
「魔術花……魔術で空に花を咲かせるもの……でしたか?」

 以前エルマーさんに聞いたことを伝えると、アダン様は驚いたように目を見開いた。

「もしかして、誰かから聞いていたのか?」
「ええ、以前エルマーさんに教えていただきました。どんなものかはまだ想像つかないのですが……」

 困惑した表情で告げると、アダン様の片方の口角が自然と上がっていく。その笑みに私は釘付だ。

「私も最初見た時は驚いた。きっと君も驚くだろう……楽しみだ」

 視線がぶつかり、私たちは自然と微笑みあう。その後、アダン様と共に二階のバルコニーへと足を運んだのだった。

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