妹に代わり泉に身を投げた私、湖底の街で愛を知る 〜虐げられた私が幸せを築くまで〜

第38話 二人きり

「二人とも、楽しんでいるか?」
「あ、アダン様!」

 彼の声にノアは振り向き。嬉しそうに彼に抱きつく。
 そんなノアを見たアダン様は……どことなく頬が緩んでいるように思う。私は仲睦まじい二人の抱擁姿を見ていると、ふとアダン様の胸元で何かが光ったような気がした。

 よく見ると、珍しくアダン様は首飾りを身につけている。どこかで見たことがあるような形の装飾品だ、と考えたところで、私は思わず首元に手を当てた。
 
 そうだ、これだ。
 私が初めてアダン様から送られた首飾り。

 きっと似たようなものを元々持っていたのだろう、と判断した私だったけれど……もしかしたらお揃いだったのかもしれない、と少しだけ胸が高鳴る。
 ただ、アダン様はそんな意味で身につけているわけではないはずだ。そう思い込もうとする私の胸に、微かな疼きが胸を掠める。

 その意味を理解する前に、私はノアに呼び止められた。

「エーヴァ! 僕、ちょっと行きたいところがあるんだ! 行ってくるね!」
「え……う、うん?」
「アダン様と一緒に行っててー!」

 そう言って走り去っていくノア。
 てっきりノアがアダン様と一緒に行くものだと考えていた私は、呆然とノアの背中を見送る。アダン様も彼のいきなりの行動に驚いたのか、口が半開きのままになっていた。

 しばらく唖然としていた私たち。けれども、先に正気を取り戻したアダン様の咳払いで、私も動き始める。ノアを放置して良いのだろうか、と訴えるようにアダン様へ視線を送っていると……。
 
「護衛の者が着いているから問題ないだろう」

 彼の言葉に胸を撫で下ろす私。そんな私の前にアダン様の手が差し出された。

「よかったら、私と祭りを回るか?」
「よろしいのですか?」
「……ああ、私が君と一緒に回りたい」

 端的ではあるが、迷いのない言葉に、私は胸の鼓動が早まっていく。それと同時に頬が上気する。

「……はい」

 私はアダン様の手の上に、自分の手を乗せた。
< 130 / 149 >

この作品をシェア

pagetop