妹に代わり泉に身を投げた私、湖底の街で愛を知る 〜虐げられた私が幸せを築くまで〜
 猊下に連れられ、私は泉の前にたどり着く。目の前には丁度人一人立てそうな平らな岩が埋められている。猊下に岩へ乗るように促された私は、一歩ずつ足を乗せて岩の上に立ち上がった。

 するとその瞬間、私の足元から夕陽のような赤い光が現れ、私の身体は光に包まれる。驚いた私は目を見開いてその光を見つめていたが、光自体に悪意を感じられない……むしろ神聖な気を感じた私は、動かず静観していた。
 周囲は騒々しくなる。

 そして時折聞こえる「儀式を進めていいのか?」という声。それが公爵の耳に入ったのだろう。儀式が中止になって私が戻ってくるのではないか、ということに嫌悪を抱いたのか……公爵は陛下へと奏上した。
 
「陛下、あの光は歓迎の光ではないでしょうか。それでしたら早く儀式を遂行するべきではございませんか?」
 
 儀式を敢行したい公爵とは裏腹に、陛下は渋い表情を浮かべている。公爵の言葉に返事をすることなく、私の隣にいた猊下へと声をかけた。

「……うむう、教皇よ。何かあの光については知っているか?」
「古文書によりますと、神託後にあの岩へ乗ると起こる現象だ、と書かれておりました。ですが……」

 そこで声を詰まらせる教皇。歯切れの悪い彼に国王は「どうした」と怪訝な表情を見せる。

「いえ、古文書には白い光と書かれていたものですから……私の勘違いかもしれませんが」
 
 猊下曰く……前回の神託から二百年ほど経っているため、聖務者の儀式について記載されている古文書が読めない状況だったらしい。なんとか解読したので、読み間違えている可能性がある。
 公爵はこの儀式の先行きが怪しくなってきた事に焦り、言葉を紡いだ。

「色はどうであれ光ったのであれば、儀式を執り行っても良いのではありませんか?」
「それもそうだな。妹嬢、よろしく頼む」

 申し訳なさそうな表情の両陛下と教皇の後ろで、嬉しさを隠せていない同居人たち。私は彼らを冷たく一瞥した後、泉に身体を向ける。そして無表情のまま、自ら泉に飛び込んだのだった。
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